「雪の妖精」として親しまれ、真っ白でふわふわな姿が人気のシマエナガ。しかし、あの愛くるしい姿は冬限定のものだということをご存知でしょうか?「夏のシマエナガはどうなっているの?」「夏は見ることができないの?」という疑問を持つファンは少なくありません。
実は、夏のシマエナガは冬とは全く異なる「スリムで精悍な姿」をしており、北海道の豊かな森の中で力強く生きています。冬のイメージとは違うそのギャップを知ることで、シマエナガという鳥の本当の魅力が見えてきます。
この記事では、北海道の自然を20年以上撮り続けてきたネイチャーフォトグラファーの筆者が、夏のシマエナガの正体、冬との見た目の違い、そして夏ならではの観察ポイントを徹底解説します。この記事を読み終える頃には、あなたも「夏のエナガ」の虜になっているはずです。
[著者情報]
ネイチャーフォトグラファー・佐藤 泰介
北海道在住。20年にわたり北海道の野生動物を撮影し、シマエナガの生態にも精通。写真集の出版や観察ツアーのガイドも務める。「野生動物のありのままの姿を伝える」をモットーに、季節ごとのシマエナガの魅力を発信している。
夏のシマエナガは「茶色い」?冬の姿との決定的な違い
冬のシマエナガは、寒さに耐えるために羽の間に空気を溜め込み、丸々と太った真っ白な姿をしています。しかし、夏になるとその姿は劇的に変化します。
1. 羽毛がスリムになり、色が変わる
夏になると、シマエナガは冬の厚い羽毛を脱ぎ捨て、薄い夏羽へと生え変わります。そのため、冬のような「雪だるま」のような丸みはなくなり、非常にスリムでスマートな体つきになります。また、真っ白だった顔の周りにも、うっすらと茶色や黒の模様が混じることがあり、精悍な印象を与えます。
2. 幼鳥(ヒナ)はさらに個性的
特に初夏に見られるシマエナガの幼鳥は、目の周りが赤っぽかったり、眉毛のような黒い模様があったりと、成鳥とは全く異なるユニークな顔立ちをしています。この時期にしか見られない「ジュリジュリ」という鳴き声と共に、家族で行動する姿は非常に愛らしいものです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 夏のシマエナガを「可愛くない」とガッカリしないでください。そのスリムな姿こそが、厳しい自然を生き抜くための機能美なのです。
なぜなら、夏の北海道の森は非常に暑くなることもあり、冬の羽毛のままではシマエナガは体温調節ができずに命を落としてしまうからです。また、夏は子育ての季節。親鳥はヒナにエサを運ぶために、1日に何百回も往復します。その激しい運動を支えるのが、このスリムな夏仕様の体なのです。
夏のシマエナガは何をしている?森の中での生態と子育て

冬は人里近くの公園や庭先にも現れるシマエナガですが、夏は深い森の奥へと移動し、繁殖活動に専念します。
巣作りと子育て
シマエナガは春から初夏にかけて、クモの巣の糸や苔を使って、非常に精巧な袋状の巣を作ります。夏のシマエナガは、この巣の中でヒナを育て、外敵から守るために必死に活動しています。
食べ物の変化
冬は樹液などを好んで食べますが、夏は森に豊富にいる昆虫やクモが主食になります。ヒナに栄養価の高い虫を運ぶため、親鳥は森の中を縦横無尽に飛び回ります。
夏にシマエナガを見つけるには?観察の難易度とポイント
正直に申し上げると、夏のシマエナガを観察する難易度は、冬に比べて格段に高いです。しかし、ポイントを押さえれば出会える可能性は十分にあります。
シマエナガ観察の季節別難易度と特徴
| 項目 | 冬(12月〜3月) | 夏(6月〜8月) |
|---|---|---|
| 観察難易度 | 低(見つけやすい) | 高(見つけにくい) |
| 主な生息地 | 公園、庭先、平地の林 | 標高の高い森、深い林 |
| 見つけやすさの理由 | 木に葉がなく、白さが目立つ | 木の葉が茂り、保護色になる |
| 観察のポイント | 鳴き声と白い塊を探す | 水場や、ヒナの鳴き声を探す |
夏の観察のコツ:水場を狙う
夏の森は暑いため、シマエナガも水浴びや水分補給のために水場にやってきます。森の中の小さな小川や、水たまりの近くで静かに待っていると、家族連れのシマエナガが降りてくることがあります。
鳴き声に耳を澄ませる
姿が見えなくても、シマエナガ特有の「ジュリリ、ジュリリ」という鳴き声が聞こえたらチャンスです。特にヒナが混じっている群れは賑やかなので、声のする方向を双眼鏡で探してみましょう。
シマエナガの夏に関するよくある質問(FAQ)
Q: 夏のシマエナガは本州でも見られますか?
A: いいえ、シマエナガは北海道にしか生息していません。
本州にいるのは亜種のエナガで、こちらは夏も冬も目の上に黒い眉毛のような模様があります。顔が真っ白になるのは北海道のシマエナガだけですが、夏はその白さが少し薄れる個体もいます。
Q: 夏のシマエナガを撮影する際の注意点は?
A: 巣には絶対に近づかないでください。
夏のシマエナガは子育ての真っ最中です。人間が巣に近づくと、親鳥が警戒して育児を放棄したり、カラスなどの天敵に巣の場所を教えてしまったりすることになります。必ず十分な距離を保ち、ブラインド(隠れ蓑)などを使って静かに見守りましょう。
Q: 夏のシマエナガはどこに行けば会えますか?
A: 北海道の標高が少し高い広葉樹林が狙い目です。
大雪山系や道東の深い森などは、夏でも比較的シマエナガが活動しやすい環境です。ただし、ヒグマ対策などの安全装備は忘れずに行ってください。
まとめ:季節を巡るシマエナガの生命力を感じよう
夏のシマエナガは、冬の「妖精」のような姿とは一味違う、野生動物としての力強さに満ちています。
- 夏のシマエナガはスリムで、羽の色に茶色が混じることがある。
- 夏は深い森で子育てに励んでおり、昆虫を主食としている。
- 観察は難しいが、水場や鳴き声を頼りに探すと出会える可能性がある。
冬の可愛らしさだけでなく、夏の逞しさも知ることで、シマエナガという存在がより愛おしく感じられるはずです。北海道の夏、緑に包まれた森の中で、一生懸命に生きるシマエナガの姿を、ぜひ優しく見守ってみてください。
[参考文献リスト]


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