キャンプの醍醐味といえば、大自然の中で食べる炊きたてのご飯です。しかし、初心者にとって「飯盒(はんごう)」を使った炊飯はハードルが高く感じられるもの。「芯が残ってしまった」「底が真っ黒に焦げた」という失敗談も後を絶ちません。
結論から言えば、飯盒炊爨の成功は「事前の吸水」と「火から下ろすタイミングの見極め」で9割決まります。
この記事では、キャンプ歴20年のベテラン探検家が、科学的な根拠に基づいた「絶対に失敗しない飯盒炊爨の手順」を徹底解説します。これを読めば、あなたも次のキャンプで家族や友人を驚かせるほど美味しいご飯を炊き上げることができます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス:アウトドア・マスター「ゴロー」
名前: 野外 吾郎(のそと ごろう)
肩書き: ブッシュクラフト・インストラクター、野外調理研究家
専門領域: 焚き火調理、飯盒炊爨、サバイバル技術
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 飯盒炊爨において、時計の針を信じすぎてはいけません。「音」と「匂い」の変化に全神経を集中させてください。
なぜなら、キャンプ場の気温や風の強さ、薪の火力は常に変化するため、マニュアル通りの「20分」が正解とは限らないからです。パチパチという音と、香ばしいお米の匂い。この五感を使った判断こそが、飯盒炊爨を成功させる唯一の近道です。
1. 「飯盒炊爨」と「飯盒炊飯」の違いとは?言葉に込められた意味
よく「飯盒炊飯(すいはん)」と呼ぶ方がいますが、キャンプや野外活動では「飯盒炊爨(すいさん)」という言葉が使われるのが一般的です。
- 炊飯(すいはん): 単にお米を炊くこと。
- 炊爨(すいさん): 火を焚き、煮炊きして食事を作ること全般。
飯盒炊爨という言葉には、単にスイッチを押す炊飯器とは異なり、「自ら火を操り、調理する」という能動的な意味が込められています。この言葉の違いを知るだけでも、野外調理への向き合い方が変わるはずです。
2. 失敗を防ぐ「3つの黄金ルール」:準備が成功の9割
飯盒炊爨で失敗する原因の多くは、火にかける前の準備不足にあります。以下の3点を必ず守ってください。
① 30分以上の「吸水」は絶対条件
お米の芯まで水分を行き渡らせるため、夏場は30分、冬場は1時間以上水に浸けてください。吸水が不十分だと、どれだけ火力を調整しても芯が残ってしまいます。
② 水加減は「飯盒の目盛り」を過信しない
飯盒の内側にある目盛りは目安です。より正確に炊くなら、「お米1に対して水1.2」の比率を意識してください。
③ 蒸らし時間は「逆さま」にする必要はない
昔は「逆さまにして底を叩く」と言われましたが、現代の知見では「そのままの状態で15分放置」がベストです。逆さまにすると、せっかくの美味しいおねば(旨味成分)が蓋に流れてしまいます。
飯盒炊爨の成功と失敗の分かれ道
| 項目 | 成功する人の行動 | 失敗する人の行動 |
|---|---|---|
| 吸水時間 | 30分以上じっくり浸ける | 洗ってすぐに火にかける |
| 火力の判断 | 音と匂いで判断する | 時計の時間だけで判断する |
| 炊き上がり後 | 15分間じっくり蒸らす | すぐに蓋を開けて確認する |
3. 実践!飯盒炊爨のステップバイステップ

それでは、具体的な手順を解説します。
手順1:洗米と吸水
お米を研いだ後、正しい分量の水を入れ、30分以上放置します。
手順2:火にかける(最初は弱火〜中火)
最初は弱火でじわじわと温度を上げます。蓋が浮かないよう、上に石などの重石を置くのがコツです。
手順3:沸騰と強火
吹きこぼれが始まったら強火にします。この時、飯盒の中から「グツグツ」という振動が伝わってきます。
手順4:仕上げの弱火と消火のサイン
吹きこぼれが収まり、音が「パチパチ」「チリチリ」という乾いた音に変わったら、火から下ろすサインです。少しお焦げを作りたい場合は、ここからさらに30秒ほど待ちます。
手順5:蒸らし
火から下ろしたら、蓋を開けずに15分間放置します。この「蒸らし」によって、お米の水分が均一になり、ふっくらとした仕上がりになります。
4. FAQ:飯盒炊爨のよくある悩み
Q. 標高が高い場所(高地)で炊く時のコツは?
A. 高地では沸点が下がるため、普通に炊くと芯が残りやすくなります。「水の量を1割増やし、重石を重くして圧力をかける」のが有効な対策です。
Q. 焦げ付いた飯盒を洗うのが大変です。
A. 炊く前に、飯盒の外側に「クレンザーや石鹸水」を塗っておくと、煤(すす)が落ちやすくなります。また、焦げ付いた場合は無理に擦らず、水を入れて沸騰させ、焦げを浮かせてから落としましょう。
飯盒炊爨は、単なる調理ではなく、自然のエネルギーである「火」と対話する儀式のようなものです。
出典: 日本キャンプ協会 – 野外活動の基礎知識, 2025年参照
まとめ:五感を使って最高の「飯」を炊こう
飯盒炊爨を成功させるポイントを振り返ります。
- 「炊爨」は火を操る楽しみ。
- 30分以上の吸水と15分の蒸らしを徹底する。
- 時計ではなく、音と匂いの変化で火を止める。
最初は失敗することもあるかもしれません。しかし、その失敗さえもキャンプの思い出になります。この記事のステップを参考に、ぜひ次回のキャンプで「最高の一杯」を味わってください。
参考文献リスト
- 公益社団法人日本キャンプ協会「キャンプ指導者入門」
- 農林水産省「お米の美味しい炊き方ガイド」 https://www.maff.go.jp/
- ロゴス(LOGOS)アウトドア・クッキング・マニュアル
[著者情報]
野外 吾郎: ブッシュクラフト・インストラクター。年間100日以上をフィールドで過ごし、焚き火一台でフルコースを作る野外調理のスペシャリスト。著書に『焚き火と飯盒の教科書』がある。


コメント