「あの人は相対的に見て優秀だ」
「相対的な貧困率が問題になっている」
ニュースやビジネスの現場でよく耳にする「相対的(そうたいてき)」という言葉。なんとなく「比較することかな?」と理解していても、いざ「絶対的」との違いを説明しようとすると、言葉に詰まってしまいませんか?
実はこの言葉、単なる「比較」という意味以上に、私たちの幸福感やビジネスの成果を左右する重要な「思考のモノサシ」でもあります。
この記事では、言葉の専門家である私が、「相対的」の正確な意味から、明日から使えるビジネス例文、そして人生を少し楽にする「相対的思考」のヒントまでを、図解を交えてわかりやすく解説します。
【著者情報】
国語講師・ライター 西園寺 薫
予備校講師として15年間、現代文を指導。「難解な言葉を小学生でもわかるように噛み砕く」解説に定評がある。著書に『大人のための語彙力再入門』など。
1. 「相対的」ってどういう意味?一言で言うと「比べっこ」

まず、結論から言いましょう。
「相対的」とは、「他との比較によってはじめて価値が決まること」です。
例えば、あなたがテストで80点を取りました。
- もし平均点が95点なら、あなたの80点は「悪い点数」です。
- もし平均点が40点なら、あなたの80点は「すごい点数」です。
このように、「周り(比較対象)によって、評価がコロコロ変わる状態」のことを「相対的」と言います。
図解で納得!「相対的」と「絶対的」の決定的な違い
対義語である「絶対的(ぜったいてき)」と比べると、その意味はより鮮明になります。
- 相対的: 比較対象がある。周り次第で価値が変わる。(例:重い/軽い、早い/遅い)
- 絶対的: 比較対象がない。それ自体で価値が決まっている。(例:1kg、時速100km)
2. 【日常編】明日から使える3つの具体例
「相対的」という概念は、私たちの生活のいたるところに隠れています。よく使われる3つの例を見てみましょう。
① テストの評価(相対評価 vs 絶対評価)
- 相対評価: 「クラスの上位10%に入ればA評価」。周りの出来が悪ければ、低い点数でもAが取れます。
- 絶対評価: 「80点以上なら全員A評価」。周りがどうであれ、自分が基準を超えればAです。
② 貧困の定義(相対的貧困 vs 絶対的貧困)
ニュースでよく聞く「相対的貧困」は、「その国の普通の生活レベルよりも貧しい状態」を指します。
- 絶対的貧困: 明日の食べ物がない、住む家がない。(生きるか死ぬかのレベル)
- 相対的貧困: スマホは持っているけれど、塾に通えない、修学旅行に行けない。(周りの「当たり前」ができないレベル)
③ 幸福度(相対的幸福 vs 絶対的幸福)
ここが一番面白いポイントです。
- 相対的幸福: 「同期より給料が高い」「隣の家より良い車に乗っている」という優越感。比較対象が自分より上になると、一瞬で不幸に変わります。
- 絶対的幸福: 「趣味に没頭している時間が幸せ」「家族といるだけで楽しい」という充実感。他人がどうであれ、自分の幸せは揺らぎません。
3. 【ビジネス編】「相対的に見て」はどう使う?
ビジネスシーンでは、客観的な分析結果を伝える際によく使われます。
正しい使用例
「自社の売上は昨年より伸びていますが、市場全体がそれ以上に急成長しているため、相対的に見るとシェアは低下しています。」
(訳:自分たちも頑張っているけれど、周りがもっとすごいから、比較すると負けているよ)
⚠️ 注意:「比較的」との混同
よく似た言葉に「比較的」がありますが、ニュアンスが少し違います。
- 相対的: 明確な比較対象(競合他社、市場平均など)がある場合に使います。論理的で硬い表現です。
- 比較的: 「割と」「どちらかというと」という主観的なニュアンスを含みます。
- △「今月の売上は相対的に良い」(何と比べて?となりがち)
- 〇「今月の売上は比較的良い」(感覚的に良いほうだ)
4. 「相対的」な思考が人生を楽にする理由
最後に、この言葉を単なる知識で終わらせないためのヒントをお伝えします。
私たちはつい、物事に「絶対的な正解」を求めがちです。「絶対に成功する方法」「絶対に幸せになれる道」。
しかし、世の中のほとんどは「相対的」です。
年収1000万円でも、周りが億万長者なら貧しく感じるかもしれません。逆に、年収300万円でも、物価の安い国で暮らせば大富豪のような生活ができるかもしれません。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 落ち込んだ時こそ「相対的」に、調子に乗った時こそ「絶対的」に考えましょう。
失敗して落ち込んだ時は、「まあ、命まで取られるわけじゃないし(歴史上の悲劇と比べれば)相対的にマシか」と考えると楽になります。
逆に、成功して天狗になりそうな時は、「周りと比べて勝った」という相対的な優越感ではなく、「昨日の自分より成長できたか?」という絶対的な基準で自分を見つめ直すと、足元をすくわれずに済みますよ。
まとめ:2つの視点を使いこなそう
- 相対的: 他との比較で価値が決まる(天秤のイメージ)。
- 絶対的: 比較なしで価値が決まる(定規のイメージ)。
この2つの視点(ズームインとズームアウト)を状況に合わせて使い分けることができれば、あなたの思考はより柔軟で、深みのあるものになるはずです。
[参考文献リスト]


コメント