「タラの芽が山菜の王様なら、コシアブラは山菜の女王だ」
山菜好きの間で、そう囁かれる特別な山菜をご存知でしょうか?
透き通るような美しい緑色、上品な苦味、そして鼻に抜ける爽やかな香り。一度その味を知ってしまうと、「タラの芽よりもコシアブラ派!」になってしまう人が後を絶ちません。
しかし、山へ採りに行くとなると「毒草と間違えたらどうしよう…」という不安もつきものです。
この記事では、山菜採り歴20年の筆者が、コシアブラの魅力から、絶対に間違えない見分け方、そして素材の味を最大限に活かす「究極のレシピ」までを徹底解説します。
【著者情報】
山崎 健一(ネイチャーガイド・山菜アドバイザー)
信州の山間部在住。春は毎日山に入り、山菜の採取と保護活動を行う。「安全に、美味しく、自然に感謝して」をモットーに、初心者向けの山菜教室も開催中。
1. コシアブラとは? なぜ「女王」と呼ばれるのか
コシアブラ(漉油)は、ウコギ科の落葉高木です。タラの芽と同じ科に属しますが、タラの芽がトゲトゲした木に生えるのに対し、コシアブラはツルッとした白っぽい木に生えます。
名前の由来
昔、この木の樹脂(油)を絞って塗料(漆のようなもの)として使っていたことから、「油を漉す(こす)木」=コシアブラと名付けられました。
旬の時期と場所
- 時期: 4月中旬〜5月中旬(桜が散った頃からが本番です)
- 場所: 日当たりの良い雑木林や、尾根筋などの明るい場所を好みます。
2. 【重要】毒草「ヤマウルシ」との見分け方

コシアブラ採りで最も注意すべきなのが、「ヤマウルシ」との誤認です。
ヤマウルシは触れるとかぶれるだけでなく、誤食すると重篤な症状を引き起こす可能性があります。
しかし、ポイントさえ押さえれば見分けるのは簡単です。
⚠️ 専門家からの警告
「迷ったら、採らない・食べない」
これが山菜採りの鉄則です。特に芽が出たばかりの小さな頃は特徴が出にくいので、自信がなければスルーする勇気を持ってください。
3. 苦味が最高! コシアブラの下処理と食べ方
コシアブラの魅力は、なんといってもその「香り」と「油との相性の良さ」です。
アクはそれほど強くないので、料理によってはアク抜きなしで食べられます。
① 下処理(ハカマ取り)
根元についている茶色の「ハカマ」は硬くて口に残るので、調理前に手でペリッと剥がしましょう。これだけでOKです。
② 王道にして至高「コシアブラの天ぷら」
最もポピュラーで、最も美味しい食べ方です。
- 作り方: 薄めの衣をつけて、高温の油でサッと揚げます。
- 味: サクッとした食感の後、口いっぱいに広がる爽やかな香りと、ほろ苦さがたまりません。塩だけで食べるのが通です。
③ 呑兵衛が泣いて喜ぶ「コシアブラの混ぜご飯」
天ぷらに飽きたら、ぜひこれを試してください。私が一番おすすめする食べ方です。
【材料】
- コシアブラ:適量
- 炊きたてご飯:2合
- 塩:小さじ1/2
- いりごま:適量
【作り方】
- コシアブラをサッと塩茹でし(1分程度)、冷水にとって色止めする。
- 水気をしっかり絞り、細かく刻む。
- 炊きたてのご飯に、刻んだコシアブラ、塩、いりごまを混ぜ込む。
- 5分ほど蒸らして、香りを米に移す。
これだけで、何杯でも食べられる「春の香りご飯」の完成です。おにぎりにしても最高ですよ。
4. 採取・購入時の注意点(放射性物質について)
最後に、少し真面目な話をします。
コシアブラなどの野生の山菜は、土壌の成分を吸収しやすい性質があります。特に放射性セシウムを吸収しやすい傾向があり、一部の地域では現在も出荷制限がかかっています。
- 自分で採る場合: 自治体のホームページなどで、採取制限が出ていないか必ず確認してください。
- 購入する場合: 道の駅やスーパーで売られているものは検査済みなので安心ですが、フリマアプリなどで個人から購入する場合は、産地をよく確認することをおすすめします。
まとめ:春の山を味わい尽くそう
タラの芽のような知名度はありませんが、一度食べればその高貴な香りの虜になる「コシアブラ」。
- 5枚葉とハカマで見分ける。
- 天ぷらと混ぜご飯で味わう。
- 採取制限を確認して安全に楽しむ。
この3つを守って、春だけの特別な「女王の味」をぜひ堪能してください。スーパーで見かけたら、迷わずカゴに入れることをおすすめします!
[参考文献リスト]


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