お墓の後ろに立てられている細長い木の板、「塔婆(とうば)」。法要の際にお寺から準備を促されることも多いですが、「そもそも何のために立てるのか?」「費用はいくら包めばいいのか?」と疑問に思う方も少なくありません。
結論から言えば、塔婆を立てることは、故人への最高の贈り物である「追善供養(ついぜんくよう)」の象徴です。
この記事では、終活アドバイザーの視点から、塔婆の深い意味や由来、費用の相場、そして宗派によるマナーの違いまで、初めて施主を務める方でも迷わないよう徹底的に解説します。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス:終活アドバイザー「誠」
名前: 佐藤 誠(さとう まこと)
肩書き: 終活アドバイザー・葬祭カウンセラー(キャリア18年)
専門領域: 仏教行事の作法、供養の現代的解釈、寺院とのコミュニケーション
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 塔婆供養で最も大切なのは、「早めの依頼」と「お布施の明確な準備」です。
なぜなら、塔婆は住職が一枚ずつ手書きで戒名や経文を記すため、法要の直前では対応できない場合があるからです。また、塔婆料は通常のお布施とは別封筒にするのがマナー。この小さな配慮が、お寺との良好な関係を築き、ひいては故人への誠実な供養に繋がります。
1. 塔婆を立てる意味と由来:なぜ「木の板」を立てるのか?

塔婆の正式名称は「卒塔婆(そとうば)」と言います。この言葉は、古代インドのサンスクリット語で「仏塔」を意味する「ストゥーパ」を漢字に当てはめたものです。
ストゥーパから板塔婆への進化
お釈迦様の遺骨を納めた「ストゥーパ」は、中国を経て日本に伝わり、五重塔や五輪塔へと姿を変えました。しかし、一般の家庭で石造りの大きな塔を建てるのは困難です。そこで、簡略化された「木の板」を塔に見立てて立てるようになったのが、現在の板塔婆の始まりです。
追善供養としての役割
仏教では、塔を建てること自体が大きな功徳(善い行い)とされています。施主が塔婆を立てることで得た功徳を故人に振り向けることを「追善供養」と呼び、これによって故人がより良い世界へ行けるよう願うのです。
2. 塔婆の種類と費用の相場:いくら包むのが正解?
塔婆にはいくつか種類があり、使用する場面や費用が異なります。
塔婆の主な種類
- 板塔婆(いたとうば): 最も一般的なもの。法要や祥月命日、お盆、お彼岸などに立てます。
- 角塔婆(かくとうば): 墓石を新しく建てた際(建碑法要)や、納骨の際に立てる太い角材の塔婆です。
費用の相場(塔婆料)
塔婆料は、お寺によって金額が決まっている場合が多いのが特徴です。
塔婆供養にかかる費用の目安
| 項目 | 相場の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 板塔婆(1枚) | 3,000円 〜 10,000円 | 5,000円前後が最も一般的です。 |
| 角塔婆(1本) | 10,000円 〜 30,000円 | 大きさや材質により変動します。 |
| 表書き | 「御塔婆料」 | 封筒の表に記載し、施主の名前を書きます。 |
※塔婆料は、読経に対する「御布施」とは別に準備するのが一般的です。
3. 塔婆供養のマナーと注意点:浄土真宗では立てない?
塔婆供養を行う際には、知っておくべき重要なマナーがあります。
浄土真宗の例外
浄土真宗では、原則として塔婆を立てません。
浄土真宗の教えでは「亡くなった人はすぐに仏様になる(往生即成仏)」と考えられているため、追善供養(故人の善行を補うこと)という概念がないからです。ただし、地域や寺院の慣習によっては立てる場合もあるため、不安な場合は菩提寺に確認しましょう。
塔婆の依頼方法
法要の案内が届いた際、または自分から法要を依頼する際に「塔婆を何枚立てるか」を伝えます。親族から「塔婆を立てたい」と申し出があった場合は、施主がまとめてお寺に依頼するのがスムーズです。
塔婆を立てることは、生きている私たちが故人のためにできる、最も具体的で功徳の高い供養の一つです。
出典: 全日本仏教会 – 仏事のQ&A, 2025年参照
4. 塔婆の処分と管理:古くなった塔婆はどうする?
お墓に立てた塔婆は、いつまで立てておくべきでしょうか。
処分のタイミング
明確な決まりはありませんが、一般的には「次の法要の時」や「1年が経過した時」に新しいものと取り替えるか、処分します。木製のため、雨風にさらされて文字が消えたり、朽ちてきたりした場合は、見た目も良くないため早めに処分を検討しましょう。
処分の方法
塔婆は仏事に使用した神聖なものです。勝手にゴミとして捨てるのではなく、お寺にある「古札納所」に納めるか、お焚き上げを依頼するのが正しいマナーです。お墓掃除の際に、お寺のスタッフに相談してみるのが一番確実です。
まとめ:塔婆は故人への「心の架け橋」
塔婆供養は、単なる形式的な慣習ではありません。
- 塔婆は「仏塔」の代わりであり、立てること自体に功徳がある。
- 費用は1枚3,000円〜10,000円が相場。別封筒で準備する。
- 浄土真宗など、宗派によって立てない場合もある。
- 古くなった塔婆は、お寺でお焚き上げしてもらう。
塔婆を立て、そこに記された故人の戒名を眺める時間は、亡き人と対話する貴重なひとときとなります。この記事が、あなたの心のこもった供養の一助となれば幸いです。
参考文献リスト
- 全日本仏教会「仏教行事のしおり」
- 鎌倉新書「いいお墓」供養のマナーガイド https://www.e-ohaka.com/
- 文化庁「宗教年鑑」
[著者情報]
佐藤 誠: 終活アドバイザー。1,000件以上の法要相談に携わり、複雑な仏事作法を分かりやすく解説することに定評がある。著書に『迷わないための供養とマナー』がある。


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