不起訴とは?前科がつかない理由と種類、釈放までの流れを解説

雑学・豆知識・意味

「警察に逮捕されたら、もう人生終わりだ」「一生、前科者として生きていくしかないのか」……。刑事事件の当事者やそのご家族が抱く最大の不安は、この「前科」ではないでしょうか。

しかし、日本において警察に検挙されたとしても、必ずしも裁判にかけられるわけではありません。実は、刑事事件の多くは「不起訴(ふきそ)」という形で終了しています。不起訴処分になれば、裁判は開かれず、前科もつきません。

この記事では、刑事事件を数多く扱ってきた弁護士の視点から、不起訴処分の正確な定義、種類、そして前科を避けるために今すぐすべきことについて、実務的な観点で徹底解説します。


[著者情報]

中村 剛(なかむら つよし)
弁護士(刑事事件専門)。15年以上にわたり、数多くの刑事事件で不起訴処分を勝ち取ってきた実績を持つ。被疑者やその家族の権利を守るため、迅速な示談交渉と検察官への働きかけを信条としている。


不起訴処分の定義と「前科」がつかない最大のメリット

刑事事件において、検察官が「裁判を行わない」と判断することを不起訴処分(ふきそしょぶん)と呼びます。

日本の刑事司法制度では、事件を裁判にかける(起訴する)権限は、原則として検察官だけが持っています(起訴独占主義)。検察官が捜査の結果、諸般の事情を考慮して「裁判にする必要はない」と判断すれば、その時点で事件は終了します。

不起訴処分を受ける最大のメリットは、以下の3点に集約されます。

  1. 前科がつかない: 裁判が開かれないため、有罪判決を受けることがなく、戸籍や検察庁の記録に「前科」として残ることはありません。
  2. 即座に釈放される: 逮捕・勾留されている場合、不起訴処分が決定した瞬間に身柄が解放され、その日のうちに自宅へ帰ることができます。
  3. 社会復帰がスムーズ: 前科がつかないため、就職や資格取得への影響を最小限に抑えることができ、これまでの生活に近い形で再出発が可能です。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「逮捕=前科」ではありません。不起訴処分を目指すことは、その後の人生を守るための最も重要な防衛策です。

なぜなら、一度ついた前科は一生消えることがなく、就職や結婚、海外渡航などに制限がかかるリスクがあるからです。一方で、不起訴処分であれば「前歴(捜査を受けた記録)」は残りますが、法的な不利益は前科に比べて極めて限定的です。


なぜ不起訴になるのか?「起訴猶予」など3つの主な種類と判断基準

検察官が不起訴処分を下す理由は、法律上いくつか存在しますが、実務で重要となるのは主に以下の3つのパターンです。

  1. 嫌疑なし(けんぎなし): 犯人ではないことが証明された、あるいは犯罪を証明する証拠が全くない場合です。
  2. 嫌疑不十分(けんぎふじゅうぶん): 犯罪の疑いはあるものの、裁判で有罪を勝ち取るに足りる確実な証拠が揃わない場合です。
  3. 起訴猶予(きそゆうよ): 実務上、最も多い不起訴の形です。 犯罪の事実は認められるものの、本人の反省、被害の軽微さ、示談の成立などを考慮し、検察官の裁量で「今回は許す(裁判にしない)」と判断されるものです。

不起訴を勝ち取るための鍵は「示談」にあり。弁護士が果たす役割

「起訴猶予」による不起訴処分を勝ち取るために、最も強力な要素となるのが被害者との示談(じだん)の成立です。

検察官は起訴・不起訴を判断する際、「被害者の処罰感情」を極めて重視します。被害者に対して謝罪し、被害弁償を行い、「許す(刑事処罰を望まない)」という合意(宥恕条項)を得ることができれば、検察官が「あえて裁判にする必要はない」と判断する可能性が飛躍的に高まります。

ここで弁護士が果たす役割は、単なる書類作成ではありません。

  • 被害者との接触: 逮捕されている被疑者本人やその家族が被害者に直接連絡を取ることは、証拠隠滅や脅迫と疑われるリスクがあり、現実的ではありません。弁護士であれば、第三者として冷静に交渉の場を設けることができます。
  • 検察官への意見書提出: 示談が成立した事実や、本人の更生環境が整っていることを論理的にまとめた「意見書」を検察官に提出し、不起訴処分を強く働きかけます。

弁護士の有無による不起訴処分の可能性の違い

項目弁護士がいない場合弁護士がいる場合
被害者交渉連絡先すら教えてもらえないことが多い弁護士を通じて誠実な交渉が可能
検察官への働きかけ捜査が進むのを待つしかない示談成立や有利な事情を即座に報告
釈放のタイミング起訴・不起訴の判断まで最大23日間拘束早期の示談成立により数日で釈放の可能性

不起訴に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 不起訴になったことは、履歴書の賞罰欄に書く必要がありますか?
A1. 原則として書く必要はありません。 履歴書の「賞罰」の「罰」とは、一般的に確定した「前科」を指します。不起訴処分は前科ではないため、記載しなかったとしても経歴詐称には当たりません。

Q2. 不起訴になれば、警察の記録からも完全に消えますか?
A2. 警察や検察の内部記録には「前歴」として残ります。これは将来、別の事件を起こしてしまった際に参照されることはありますが、一般の企業や第三者がこの記録を照会することは不可能です。


まとめ:不起訴処分は「人生の再スタート」への切符

不起訴処分とは、単に「裁判にならない」というだけでなく、「前科をつけずに社会復帰できるチャンス」を意味します。

  • 不起訴になれば前科はつかない
  • 起訴猶予を目指すなら、被害者との示談が最優先
  • 迅速な弁護活動が、早期釈放と不起訴への近道

もし、あなたや大切な人が刑事事件の当事者になってしまったら、絶望する前にまずは専門家に相談してください。時間は刻一刻と過ぎていきますが、適切な対応を今すぐ始めれば、未来を変えることは十分に可能です。

[参考文献リスト]

  1. 検察庁, 刑事事件の手続き
  2. 法務省, 犯罪白書(令和5年版)
  3. 日本弁護士連合会, [刑事弁護の活動ガイドライン]

[著者プロフィール]
中村 剛
刑事事件の弁護に特化した法律事務所の代表弁護士。被疑者の権利を守り、一日も早い社会復帰を実現することをミッションとしている。冷静な判断力と、被害者の心情に配慮した粘り強い交渉力に定評がある。

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