「iPhoneで『ローカルネットワーク上のデバイス検索』を許可しますか?と出て不安になった」「会社でLAN(ラン)を組むと言われたけれど、具体的に何のこと?」……。デジタルライフを送る中で、避けては通れないのがローカルネットワーク(LAN)という言葉です。
ローカルネットワークは、家の中やオフィス内といった「限定された範囲」でデバイス同士をつなぐ、いわば「身内だけの通信網」です。この記事では、ネットワーク構築に15年以上携わってきた専門家の視点から、ローカルネットワークの正体、インターネットとの違い、そしてスマホでよく目にするセキュリティ設定の重要性について、専門用語を噛み砕いて徹底解説します。
[著者情報]
高橋 渉(たかはし わたる)
ネットワークエンジニア・ITコンサルタント。大手通信インフラ企業での設計・運用を経て独立。家庭用Wi-Fiから大規模オフィスのネットワーク構築まで、延べ1,000件以上の現場を経験。「複雑な技術を、誰でも使える知識に変える」をモットーに活動中。
専門領域: ネットワークインフラ設計、情報セキュリティ、スマートホーム構築。
ローカルネットワークの正体:家やオフィスの中だけの「専用道路」
ローカルネットワーク(Local Area Network、通称:LAN)とは、自宅や学校、オフィスといった特定の建物や敷地内にあるデバイス同士を接続するネットワークのことです。
私たちが普段使っている「インターネット」が、世界中の誰とでもつながる「公道(高速道路)」だとすれば、ローカルネットワークは、あなたの家の中だけで完結する「私道(庭の通路)」のようなものです。
ローカルネットワークを構築することで、以下のようなことが可能になります。
- ファイルの共有: パソコンにある写真を、ケーブルをつながずに別のタブレットで見る。
- 周辺機器の共有: 1台のプリンターを、家族全員のスマホやPCから使う。
- スマート家電の操作: 外出先からスマホでエアコンをつけたり、照明を操作したりする。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: ローカルネットワークの最大のメリットは「安全性」と「速度」です。
なぜなら、ローカルネットワーク内の通信は、原則として外部(インターネット)に出ることなくデバイス間で直接行われるからです。大容量の動画ファイルをPCからテレビに飛ばして再生しても、インターネットの通信制限を気にする必要はありませんし、外部からの不正アクセスもルーターという「門番」によって守られています。
インターネット(WAN)との違いは?ルーターが果たす「橋渡し」の役割

ローカルネットワークを理解する上で欠かせないのが、WAN(Wide Area Network)、つまりインターネットとの関係性です。
家の中のデバイス(スマホ、PC、ゲーム機など)は、まず「ローカルネットワーク」に参加します。そして、そのローカルネットワークの出口にある「ルーター」という機器を通じて、世界中のネットワークである「インターネット(WAN)」へとつながっていきます。
このとき、ルーターは「家の中の住所(プライベートIPアドレス)」と「外の世界での住所(グローバルIPアドレス)」を交通整理する役割を担っています。
iPhoneやPCで聞かれる「ローカルネットワークの許可」とは?
最近、iPhoneやiPadでアプリを起動した際に「ローカルネットワーク上のデバイスの検索および接続を求めています」という通知が表示されるようになりました。これは、プライバシー保護のための重要なセキュリティ機能です。
この許可を求められたとき、どう判断すべきでしょうか?
- 許可して良いケース: YouTubeをテレビに飛ばして見たい(ChromecastやAirPlay)、ワイヤレスプリンターで印刷したい、スマート家電を操作したい場合など。
- 許可しなくて良いケース: 単なるパズルゲームや、オフラインで使う計算機アプリなど、他の機器と連携する必要がないアプリの場合。
安易にすべてのアプリに許可を与えると、悪意のあるアプリがあなたのネットワーク内にある他の機器(NASや共有フォルダなど)をスキャンするリスクが生じます。
ローカルネットワーク(LAN)とインターネット(WAN)の比較
| 比較項目 | ローカルネットワーク (LAN) | インターネット (WAN) |
|---|---|---|
| 範囲 | 自宅、オフィス、学校内など限定的 | 世界中、国をまたいだ広範囲 |
| 管理主体 | あなた自身、または組織の管理者 | 通信事業者(プロバイダ)など |
| 通信速度 | 非常に高速(機器の性能に依存) | 契約プランや混雑状況に左右される |
| 主な接続方法 | Wi-Fi、有線LANケーブル | 光回線、4G/5Gモバイル通信 |
| セキュリティ | 外部から遮断されており比較的安全 | 常に外部の脅威にさらされている |
ローカルネットワークに関するよくある質問(FAQ)
Q1. Wi-Fiとローカルネットワークは同じ意味ですか?
A1. 厳密には違います。ローカルネットワークは「つながっている網」そのものを指し、Wi-Fiは「無線でローカルネットワークにつなぐための手段」の一つです。有線LANケーブルでつないでも、Wi-Fiでつないでも、同じローカルネットワークに参加していることになります。
Q2. 公衆Wi-Fi(カフェや駅)のローカルネットワークは安全ですか?
A2. 注意が必要です。 不特定多数の人が同じローカルネットワークに参加しているため、設定によっては自分のデバイスが他の利用者から見えてしまう可能性があります。公衆Wi-Fiを利用する際は、ファイル共有設定をオフにするか、VPNサービスを利用して通信を保護することを強くおすすめします。
まとめ:ローカルネットワークを正しく知って、安全で快適なITライフを
ローカルネットワークは、私たちのデジタルな暮らしを支える「見えないインフラ」です。
- ローカルネットワーク(LAN)は、家やオフィス内限定の高速で安全な通信網。
- ルーターが、ローカルネットワークとインターネット(WAN)の橋渡しをしている。
- セキュリティ設定を適切に行うことで、プライバシーを守りながら便利な機能(共有や連携)を活用できる。
「ローカルネットワーク」という言葉を正しく理解することで、デバイスの設定に迷わなくなり、より安全にテクノロジーを使いこなせるようになります。次にスマホで「許可」を求められたときは、そのアプリが本当に他の機器と話す必要があるのか、一度立ち止まって考えてみてください。
[参考文献リスト]
- 総務省, 国民のための情報セキュリティサイト:LANの安全な利用
- Apple サポート, iOS や iPadOS でアプリのローカルネットワークへのアクセスを許可する
- IPA(独立行政法人 情報処理推進機構), [家庭用無線LANルーターのセキュリティ対策]
[著者プロフィール]
高橋 渉
ネットワークの「目に見えないつながり」を可視化するスペシャリスト。技術的な正確さと、ユーザーの利便性のバランスを重視した解説に定評がある。趣味は、自宅のあらゆる家電をネットワーク化して自動制御すること。


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