北海道を訪れた際や、居酒屋のメニューで必ずと言っていいほど目にする「ザンギ」。一見すると鶏の唐揚げと同じように見えますが、北海道民に「ザンギと唐揚げは同じ?」と聞けば、多くの人が「いや、別物だ」と答えるでしょう。
ザンギは、単なる鶏の揚げ物という枠を超え、北海道の歴史や食文化が凝縮された「ソウルフード」です。しっかりとした濃いめの味付け、サクッとした衣の食感、そして溢れ出す肉汁。その魅力は、一度食べれば忘れられない力強さを持っています。
この記事では、北海道の食文化を長年取材してきた筆者が、ザンギの定義や唐揚げとの決定的な違い、釧路から始まった意外な歴史、そして本場ならではの美味しい食べ方までを徹底解説します。
[著者情報]
北海道フードライター・道産子 太郎
札幌在住のフリーライター。北海道全179市町村を巡り、各地の郷土料理やB級グルメを取材。特にザンギに関しては、発祥の地である釧路の名店から札幌の最新店まで、年間100食以上を食べ歩く「ザンギ愛好家」でもある。
ザンギと唐揚げは何が違う?北海道民がこだわる「定義」の正体
「ザンギと唐揚げの違いは何ですか?」という問いに対し、明確な公的定義があるわけではありません。しかし、北海道の食文化における一般的な認識として、いくつかの決定的な違いが存在します。
1. 味付けのタイミングと濃さ
唐揚げは、鶏肉に軽く下味をつけるか、あるいは揚げた後に塩やレモンで味を調えることもあります。対してザンギは、揚げる前の鶏肉に醤油、生姜、ニンニクなどで非常に濃い下味をつけるのが最大の特徴です。肉の内部までしっかりと味が染み込んでいるため、何もつけずにそのまま食べてもご飯やお酒が止まらない濃厚な味わいになります。
2. 衣の構成
ザンギの衣には、小麦粉だけでなく片栗粉を混ぜたり、卵を加えたりすることが多いです。これにより、唐揚げよりも少し厚めで、カリッとした力強い食感の衣が生まれます。
3. 鶏肉以外も「ザンギ」と呼ぶ
北海道では、鶏肉以外を揚げたものも「ザンギ」と呼びます。タコを揚げれば「タコザンギ」、シカ肉なら「シカザンギ」といった具合です。つまり、北海道においてザンギとは、特定の調理法や味付けを指す包括的な言葉なのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: ザンギと唐揚げの境界線は曖昧になりつつありますが、「肉自体にガツンと味がついているか」がザンギを見極める最大のポイントです。
なぜなら、ザンギはもともと「冷めても美味しい」ことが重視されていたからです。北海道の厳しい寒さの中でも、お弁当や持ち帰りで美味しく食べられるよう、濃い味付けとしっかりした衣が発達しました。この「冷めても損なわれない満足感」こそが、ザンギがソウルフードとして定着した理由の一つです。
釧路から始まった!ザンギの歴史と名前の由来

ザンギの歴史を辿ると、1960年(昭和35年)頃の北海道釧路市に辿り着きます。
発祥の店「鳥松(とりまつ)」
釧路市の末広町にある末広歓楽街で産声を上げた「鳥松」という店が、ザンギの発祥とされています。当時、ブロイラー(若鶏)が普及し始めた頃で、店主が鶏を一羽丸ごとぶつ切りにして揚げたのが始まりです。
「ザンギ」という名前の由来
ザンギという名前は、中国語で鶏の唐揚げを意味する「炸鶏(ザーチー/ジャージ)」に、運がつくようにと「ん」を加え、「ザー・ん・ジー」=「ザンギ」と名付けられたという説が有力です。
本場の味を楽しむ!ザンギのバリエーションと美味しい食べ方
ザンギには、地域や店によって様々なバリエーションがあります。
1. 釧路スタイル(タレザンギ)
発祥の地・釧路では、ザンギに専用の「タレ」をつけて食べるのが一般的です。ウスターソースをベースにした甘辛いタレに、コショウや一味を効かせたものにドブ漬けして食べます。
2. 札幌スタイル(大ぶり・ジューシー)
札幌などの都市部では、一つ一つが拳ほどもある大きなザンギが人気です。外はカリッと、中は肉汁が溢れるほどジューシーに仕上げるのが主流です。
ザンギと唐揚げの比較まとめ
| 項目 | ザンギ | 一般的な唐揚げ |
|---|---|---|
| 下味 | 非常に濃い(醤油・生姜・ニンニク) | 比較的薄め、または塩ベース |
| 衣 | 厚めでカリッとしている(卵を使うことも) | 薄めでサクッとしている |
| 食べ方 | そのまま、または専用タレをつける | レモン、塩、マヨネーズなど |
| 対象食材 | 鶏、タコ、魚介、ジビエなど幅広い | 主に鶏肉 |
| 主な発祥 | 北海道釧路市 | 諸説あり(大分県中津市など) |
ザンギに関するよくある質問(FAQ)
Q: ザンギ粉というものが売っていますが、普通の唐揚げ粉と違いますか?
A: はい、ザンギ粉は醤油やスパイスの風味がより強く配合されています。
北海道のスーパーでは「ザンギ名人」などの専用粉が定番です。これを使うと、家庭でも簡単に「あの濃い味」を再現できます。
Q: タコザンギとタコの唐揚げは同じですか?
A: 北海道では、タコにしっかり下味をつけて揚げたものを「タコザンギ」と呼びます。
居酒屋の定番メニューで、吸盤のコリコリした食感と濃い味付けがお酒に最高に合います。
Q: ザンギはヘルシーですか?
A: 揚げ物ですのでカロリーは高めですが、最近では鶏むね肉を使ったヘルシーなザンギも増えています。
しかし、本場の味を楽しむなら、やはりジューシーな「もも肉」が王道です。
まとめ:北海道の魂を味わう「ザンギ」
ザンギは、単なる料理名ではなく、北海道の人々の生活に深く根ざした文化そのものです。
- 肉自体にしっかり濃い味をつけ、カリッと揚げるのがザンギの流儀。
- 釧路の「鳥松」から始まり、運を呼ぶ名前として「ザンギ」と名付けられた。
- 鶏肉だけでなく、タコや魚介など様々な食材で楽しまれている。
北海道を訪れた際は、ぜひ地元の居酒屋や定食屋で、その店こだわりのザンギを味わってみてください。一口噛み締めるたびに、北海道の力強い食のエネルギーを感じることができるはずです。
[参考文献リスト]


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