アクリル絵の具の使い方は?初心者でも失敗しない基本と「魔法の特性」をプロが解説

お悩み解決・HOW TO

「油絵のような重厚な絵を描きたいけれど、準備が大変そう」「水彩絵の具だと色が薄くて物足りない」……。そんな悩みを一気に解決してくれるのが、アクリル絵の具です。

アクリル絵の具は、初心者でも扱いやすく、かつプロの表現にも応える「万能の絵の具」です。最大の特徴は、「乾く前は水に溶けるのに、乾くと完全な耐水性になる」という魔法のような性質にあります。この記事では、10年以上アート講師として活動してきた専門家の視点から、アクリル絵の具の基本特性、失敗しないためのコツ、そして自分にぴったりの絵の具の選び方を徹底解説します。


[著者情報]

佐藤 みずき(さとう みずき)
画家・アートスクール講師。美大卒業後、アクリル画を中心に制作活動を行い、現在は初心者向けの絵画教室を主宰。「道具の特性を知れば、誰でも表現は自由になれる」をモットーに、これまでに500人以上の受講生に絵を描く楽しさを伝えている。


アクリル絵の具の正体:水彩と油絵の「いいとこ取り」をした万能性

アクリル絵の具が世界中のアーティストに愛される理由は、他の絵の具にはない独特の性質にあります。その本質は、顔料(色の粉)を「アクリル樹脂」で固めている点にあります。

アクリル絵の具には、大きく分けて3つの画期的な特徴があります。

  1. 速乾性: 数十分から1時間程度で乾くため、どんどん色を塗り重ねることができます。油絵のように数日間乾くのを待つ必要はありません。
  2. 耐水性: 乾くとプラスチックのように固まり、水に濡れても色が落ちません。そのため、重ね塗りをしても下の色が濁らず、鮮やかな発色を維持できます。
  3. 接着力: 紙だけでなく、布、木、石、プラスチック、金属など、油分を含まないあらゆる素材に描くことができます。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: アクリル絵の具を使う際は、「パレットの上で絵の具が乾かないようにすること」が最も重要です。

なぜなら、アクリル絵の具は一度乾いて固まってしまうと、水に溶けなくなるため、パレットや筆が再起不能になるからです。作業中は霧吹きでパレットに軽く水をかけたり、使い捨てのペーパーパレットを利用したりして、絵の具の乾燥をコントロールしましょう。


透明か不透明か?「アクリルカラー」と「アクリルガッシュ」の決定的な違い

アクリル絵の具選びで初心者が最も迷うのが、「普通のアクリル絵の具(アクリルカラー)」「アクリルガッシュ」の違いです。この2つは、仕上がりの質感が全く異なります。

  • アクリルカラー(透明・半透明): 水の量で透明感を調整でき、重ねることで深みが出ます。表面にツヤが出るものが多く、油絵のような質感を出しやすいのが特徴です。
  • アクリルガッシュ(不透明): 色が濃く、下の色を完全に隠す力が強いです。ツヤ消しのマットな質感に仕上がり、ポスターやイラスト、デザイン画のようにムラなく平らに塗るのに適しています。

失敗を防ぐ!アクリル絵の具を扱うための3つの鉄則

アクリル絵の具を楽しく使いこなすためには、水彩絵の具とは異なる「作法」が必要です。

  1. 筆はこまめに洗う: 描いている最中も、使っていない筆は水に浸けておきましょう。筆の根元で絵の具が固まると、筆が割れて使えなくなります。
  2. 水の量を調節する: 水を多く混ぜれば水彩風に、少なくすれば油絵風になります。ただし、水を30%以上混ぜすぎると、アクリル樹脂の接着力が弱まり、剥がれやすくなることがあるので注意が必要です。
  3. 服につかないようにする: 乾くと耐水性になるため、服につくと洗濯しても絶対に落ちません。必ずエプロンを着用するか、汚れてもいい服装で作業しましょう。

主要な絵の具の特性比較

比較項目水彩絵の具アクリル絵の具油絵の具
乾燥時間早い非常に早い非常に遅い(数日〜数週間)
乾燥後の性質水に溶ける水に溶けない(耐水性)水に溶けない
重ね塗り下の色が溶け出す下の色が溶け出さない可能だが時間がかかる
描ける素材主に紙紙、木、布、石など万能キャンバス、木
お手入れ水で簡単に落ちる乾く前なら水で落ちる専用のオイルが必要

アクリル絵の具に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 100円ショップのアクリル絵の具でも大丈夫ですか?
A1. 練習用としては十分使えます。ただし、専門メーカー品(リキテックスやターナーなど)に比べると、顔料の密度が低いため発色が弱かったり、経年劣化で色褪せやすかったりすることがあります。長く残したい作品を描くなら、専門メーカーのセットをおすすめします。

Q2. 固まってしまったアクリル絵の具を復活させる方法はありますか?
A2. 残念ながら、一度完全に固まったアクリル絵の具を元に戻す方法はありません。 アクリル樹脂が化学変化を起こしてプラスチック状になっているためです。チューブのキャップは常にしっかり閉め、パレット上の絵の具は使い切る分だけ出すようにしましょう。


まとめ:アクリル絵の具で「自由な表現」を手に入れよう

アクリル絵の具は、その万能さゆえに、あなたの「描きたい」という気持ちにどこまでも応えてくれる道具です。

  • 速乾性と耐水性を活かして、失敗を恐れず塗り重ねる。
  • アクリルカラーとガッシュを、好みの質感で使い分ける。
  • 筆の管理と乾燥にだけ注意して、自由な素材に描いてみる。

最初は小さな紙や、拾ってきた石に色を塗るだけでも構いません。アクリル絵の具の鮮やかな発色と、思い通りに色が重なる快感を知れば、あなたの日常はもっとクリエイティブで楽しいものになるはずです。

[参考文献リスト]

  1. ホルベイン画材株式会社, アクリル絵具の基礎知識
  2. ターナー色彩株式会社, アクリルガッシュの使い方ガイド
  3. バニーコルアート株式会社(リキテックス), [リキテックス・スクール:アクリル絵具の特徴]

[著者プロフィール]
佐藤 みずき
アクリル画の可能性を広げる活動を続けるアーティスト。自身の作品制作では、アクリル絵の具に砂やメディウムを混ぜたミクストメディア技法を得意とする。趣味は、旅先で見つけた面白い形の石に絵を描くこと。

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