春の訪れを告げる、白く可憐な鈴形の小さな花。すずらん(鈴蘭)は、その愛らしい姿から世界中で愛され、大切な人へ贈る花としても高い人気を誇ります。
しかし、すずらんには「幸せ」を象徴する素晴らしい花言葉がある一方で、扱う際に必ず知っておかなければならない「注意点」も存在します。この記事では、15年以上花の世界に携わってきた専門家の視点から、すずらんの花言葉の由来、フランスに伝わる素敵な風習、そして贈り物として選ぶ際に役立つ実践的な知識を徹底解説します。
[著者情報]
内田 陽子(うちだ ようこ)
フラワーコンサルタント・フローリスト。都内有名生花店での店長経験を経て独立。現在はウェディングフラワーのプロデュースや、花文化に関する執筆活動を行う。「花を通じて日常に物語を添える」をモットーに、これまでに1万件以上のギフト提案に携わる。
専門領域: 花言葉の歴史的背景、フラワーギフトのマナー、植物のケア。
すずらんの代表的な花言葉:「再び幸せが訪れる」に込められた希望
すずらんの花言葉として最も有名なのが、「再び幸せが訪れる(Return of Happiness)」です。
この言葉は、北半球の寒い地域で、厳しい冬を乗り越えた後に春の訪れとともに真っ先に咲き始めるすずらんの生態に由来しています。雪解けの中から顔を出すその姿は、人々にとって「希望」や「喜び」の象徴そのものでした。
他にも、すずらんにはその清廉な姿を反映した以下の花言葉が添えられています。
- 純粋・純潔: 汚れのない真っ白な花の色から。
- 謙虚: 葉の陰に隠れるように、うつむき加減に咲く控えめな姿から。
- 幸福の再来: フランス語の「Le retour du bonheur」の直訳。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: すずらんを贈る際は、ぜひ「再び幸せが訪れる」というメッセージをカードに添えてみてください。
なぜなら、この花言葉は「今が幸せな人」だけでなく、「今、困難の中にいる人」や「新しい門出を迎える人」にとっても、非常に力強い励ましになるからです。特に、病気見舞いからの快気祝いや、再出発を祝うシーンにおいて、すずらんはこれ以上ないほどふさわしい選択となります。
フランスの風習「ミュゲの日」:5月1日にすずらんを贈る理由

すずらんと「幸せ」の結びつきを語る上で欠かせないのが、フランスの素敵な伝統行事「ミュゲの日(Jour de Muguet)」です。
フランスでは毎年5月1日に、家族や友人、恋人など、愛する人へすずらんを贈る習慣があります。贈られた人には幸運が訪れると言い伝えられており、この日は街中の至る所ですずらんが販売されます。
この風習の起源は16世紀、フランス国王シャルル9世が「幸せを運ぶ花」としてすずらんを贈られたことに感激し、宮廷の女性たちへ毎年贈るように決めたことにあると言われています。現代でも、5月1日のすずらんは「愛と感謝」を伝える特別なメッセンジャーとして親しまれています。
【重要】美しさの裏にある「毒性」:安全に楽しむためのマナー
すずらんを扱う上で、専門家として必ずお伝えしなければならないのが、その強い毒性についてです。すずらんは、花、葉、根、そして「生けていた水」に至るまで、全体にコンバラトキシンなどの強心利尿作用を持つ毒を含んでいます。
特に、小さなお子様やペット(犬や猫)がいるご家庭では、以下の点に細心の注意を払ってください。
- 誤食の防止: 花や実を口に入れないよう、手の届かない場所に飾る。
- 水の取り扱い: すずらんを生けていた水を誤って飲まないよう、すぐに捨てる。
- 手洗い: 茎を切ったり触れたりした後は、手をよく洗う。
春を代表する白い花たちの比較
| 花の名前 | 代表的な花言葉 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| すずらん | 再び幸せが訪れる | 鈴形の小さな花、強い芳香 | 全体に強い毒性あり |
| スノードロップ | 希望、慰め | 下向きに咲く一重の花 | 球根に毒性あり |
| カスミソウ | 感謝、無邪気 | 小さな花が群生する | 特になし(ドライに最適) |
| 白いカーネーション | 純粋な愛、尊敬 | フリルのような花びら | 母の日の定番 |
すずらんに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 結婚式のブーケにすずらんを使いたいのですが、時期はいつが良いですか?
A1. すずらんの本来の旬は4月〜5月です。この時期は品質も良く、香りも最高です。イギリスのキャサリン妃が結婚式ですずらんのブーケを持ったことで、ウェディングフラワーとしての人気がさらに高まりました。旬以外の時期でも入手可能な場合がありますが、非常に高価になることが多いため、早めにフローリストへ相談することをおすすめします。
Q2. すずらんの香水があるほど香りが良いと聞きましたが、どんな香りですか?
A2. 「聖母マリアの涙」とも例えられるすずらんの香りは、バラ、ジャスミンと並んで「三大フローラルノート」の一つに数えられます。透明感のある、爽やかで瑞々しい甘さが特徴です。ただし、生花から香料を抽出するのが難しいため、多くの香水は調合によってその香りを再現しています。
まとめ:すずらんは「心からの幸せ」を願う最高の一輪
すずらんは、その小さな体に溢れんばかりの希望と物語を秘めた花です。
- 「再び幸せが訪れる」という花言葉は、あらゆる門出にふさわしい。
- 5月1日のミュゲの日のように、大切な人へ幸運を贈る習慣を取り入れてみる。
- 強い毒性があることを理解し、安全に配慮して楽しむ。
この花の特性を正しく知り、敬意を持って扱うことで、すずらんはあなたやあなたの周りの人々に、文字通り「幸せ」を運んできてくれるはずです。今年の春は、大切な誰かへ、あるいは自分自身へ、すずらんを一輪贈ってみてはいかがでしょうか。
[参考文献リスト]
- フランス観光開発機構, 5月1日はすずらんの日(ミュゲの日)
- 厚生労働省, 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:スズラン
- 日本花普及センター, [花言葉事典:春の花]
[著者プロフィール]
内田 陽子
花の持つ文化的背景と実用的なケアの両面から、豊かな花のある暮らしを提案。すずらんの繊細な香りと、その強靭な生命力に魅了され、毎年5月には自身のサロンですずらんのワークショップを開催している。趣味は、世界中のボタニカルアートを収集すること。


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