「会議の議事録で『留意してください』と書かれたが、具体的に何をすればいいのか?」
「『注意』と『留意』、どちらを使うのがビジネスマナーとして適切だろうか?」
ビジネス文書や公的な書類で頻繁に目にする「留意(りゅうい)」という言葉。日常語の「注意」と似ていますが、そのニュアンスや使いどころを正しく理解していないと、相手に意図が正確に伝わらなかったり、場違いな印象を与えてしまったりすることがあります。
本記事では、「留意」の正確な意味から、「注意」との決定的な違い、そして今日からそのまま使えるビジネス例文まで、言葉の専門家が詳しく解説します。
1. 「留意」の意味:結論
「留意」とは、「ある事柄に心を留め、常に気をつけること」を意味します。
漢字を分解すると、「留(とどめる)」と「意(こころ・意識)」になります。つまり、その場限りの反応ではなく、「ある程度の期間、そのことを意識の片隅に置き続ける」という継続的な心の状態を表す言葉です。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「留意」は、「静かな、持続的な意識」を求める際に使いましょう。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちですが、「留意」には「今すぐ危険を回避せよ」という緊急性はないからです。プロジェクトの進行中や、長期的な運用ルールにおいて、「忘れないように配慮し続けてほしい」という文脈で使うのが最も効果的です。この知見が、あなたの正確な情報伝達の助けになれば幸いです。
2. 「留意」と「注意」の決定的な違い

最も混同されやすい「注意」との違いを、3つの観点から整理します。
① 緊急性と強制力の差
- 注意: 「危ない!」「間違えるな!」といった、緊急かつ具体的な行動変容を求める際に使います。強制力が強く、即座の対応が必要です。
- 留意: 「念頭に置いておいてください」という、比較的マイルドで継続的な配慮を求める際に使います。
② 対象の広さ
- 注意: 特定のミスや危険など、ピンポイントな対象に使われます。
- 留意: 「全体のバランス」や「背景にある事情」など、幅広く抽象的な事柄に対しても使われます。
③ 持続時間
- 注意: その瞬間、あるいは短期間の集中を指します。
- 留意: 期間中ずっと、あるいは習慣として意識することを指します。
3. ビジネスでそのまま使える「留意」の例文
「留意」は、主に上司への報告、取引先への依頼、マニュアルの記載などで重宝されます。
① 相手に配慮を求める場合(依頼)
- 「本件の進め方につきまして、以下の3点にご留意いただけますと幸いです。」
- 「季節の変わり目ですので、何卒ご自愛(健康にご留意)ください。」
② 自分が気をつけることを伝える場合(宣言)
- 「ご指摘いただいた点に十分留意し、資料の修正を行います。」
- 「今後の運用においては、コスト削減に最大限留意してまいります。」
③ 文書やマニュアルでの記載
- 「【留意事項】本製品を屋外で使用する際は、湿気に十分ご注意ください。」
※「留意事項」は、あらかじめ知っておいてほしい補足や前提条件としてよく使われる表現です。
「留意」の類語と言い換え表現
| 言葉 | ニュアンス | 適したシーン |
|---|---|---|
| 留意 | 心に留めておく(継続的) | 計画の遂行、健康管理、マニュアル |
| 注意 | 気をつける(即時的・具体的) | 危険回避、ミス防止、警告 |
| 配慮 | 相手や周囲のために心を配る | 接待、交渉、人間関係 |
| 用心 | 悪いことが起きないよう備える | 防犯、リスク管理、疑わしい事態 |
| 念頭に置く | 常に意識しておく | 戦略立案、前提条件の確認 |
4. 使用上の注意点:目上の人に使っても大丈夫?
「留意」という言葉自体に敬語の要素はありませんが、非常に丁寧で知的な響きを持つため、ビジネスシーンで目上の人に使っても問題ありません。
ただし、「留意してください」と命令形で使うと、相手に「上から目線」の印象を与えてしまう可能性があります。目上の人や取引先に対しては、以下のように敬語表現と組み合わせて使いましょう。
- × 悪い例: 「この点に留意してください。」
- ○ 良い例: 「この点にご留意いただけますでしょうか。」
- ○ 良い例: 「この点にご留意賜りますようお願い申し上げます。」
5. まとめ:言葉を使い分けて「信頼」を築く
「留意」という言葉を正しく使えるようになると、あなたの発言や文章に「思慮深さ」と「プロフェッショナルな品格」が宿ります。
「今すぐ直してほしい」ときは注意を、「常に意識して進めてほしい」ときは留意を。この使い分け一つで、チームの動きや相手の受け取り方は劇的に変わります。ぜひ、次回のメールや報告書から、意識的に「留意」を取り入れてみてください。
[著者プロフィール]
名前: 織田 裕二(おだ ゆうじ)
肩書き: ビジネスコミュニケーション・アドバイザー / 文筆家
専門領域: 現代ビジネス日本語、論理的文章術、エグゼクティブ・マナー
主な実績: 大手企業の広報・秘書を経て独立。ビジネス語彙に関するセミナーを年間50回以上開催。著書に『その一言で評価が変わる!大人の語彙力』がある。
[参考文献リスト]
- 文化庁 – 敬語の指針
- 『広辞苑 第七版』 (岩波書店)
- 『例解類語辞典』 (小学館)


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