「少し体調が悪いけれど、会社を休んでもいいだろうか?」
「取引先に予定の変更をお願いしたいが、角が立たない言い方は?」
ビジネスシーンにおいて、無理をして状況を悪化させる前に、リスクを回避するための判断を伝える言葉が「大事をとって(だいじをとって)」です。この表現は、自分の身を守るだけでなく、周囲への影響を最小限に抑えるための「誠実な配慮」を示す言葉でもあります。
本記事では、「大事をとって」の正確な意味から、上司や取引先への適切な伝え方、状況に応じた言い換え表現まで、ビジネスマナーの専門家が詳しく解説します。
1. 「大事をとって」の意味:結論
「大事をとって」とは、将来起こりうる悪い事態を避けるために、慎重に振る舞うこと、あるいは万全を期して無理をしないことを意味します。
「大事(だいじ)」には「重大な事件」や「取り返しのつかない事態」という意味があります。それを「とる(選ぶ・考慮する)」ことで、「最悪の事態にならないよう、今のうちに適切な処置をしておく」というニュアンスが含まれます。
具体的には、以下のような状況で使用されます。
- 体調が少し悪いので、悪化する前に休む。
- 天候が怪しいので、イベントを中止にする。
- 小さなミスが見つかったので、念のために再検査する。
2. ビジネスシーンでの正しい使い方と例文
「大事をとって」という表現は、自分自身の行動だけでなく、組織としての判断を伝える際にも非常に有効です。相手に対して「無責任に投げ出すのではなく、先を見据えて慎重に判断した」という印象を与えることができます。
① 体調不良で欠勤・早退する場合(上司へ)
「朝から微熱があるため、大事をとって本日はお休みをいただけますでしょうか。明日の会議には万全の状態で出席したく存じます。」
② 予定の延期や中止を提案する場合(取引先へ)
「台風の接近が予想されております。当日の混乱を避け、皆様の安全に大事をとって、打ち合わせを来週に延期させていただけますでしょうか。」
③ スポーツやイベントでの欠場・中止
「エースピッチャーの肩に違和感があるため、大事をとって今日の登板は見送ることになりました。」
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「大事をとって」を使う際は、必ず「その後の前向きな見通し」をセットで伝えましょう。
なぜなら、単に「休みます」と言うだけでは消極的な印象を与えますが、「明日のために、今は大事をとる」と伝えることで、責任感を持ってコンディションを管理しているという評価に繋がるからです。無理をして現場で倒れることこそが、ビジネスにおける最大の不義理であると心得ましょう。
3. 「大事をとって」の言い換え表現と使い分け

状況や相手との関係性によって、より適切な言い換え表現があります。「大事をとって」と「念のため」などの類語の関係性を整理しましょう。
「大事をとって」と類語の使い分け
| 表現 | ニュアンス | 適したシーン |
|---|---|---|
| 大事をとって | 悪化を防ぐ、慎重な判断 | 体調不良、リスク回避の欠席 |
| 万全を期して | 完璧を期す、落ち度をなくす | 重要なプレゼン、最終チェック |
| 念のため | 確認のため、念押し | 念のための再送、確認の連絡 |
| 慎重を期して | 失敗が許されない状況 | 契約締結、大規模な投資判断 |
4. よくある質問(FAQ)
Q. 「大事をとって」は敬語ですか?目上の人に使っても失礼になりませんか?
A. 「大事をとって」自体は敬語ではありませんが、丁寧な言葉遣い(「大事をとって休みます」など)と組み合わせることで、上司や取引先にも問題なく使えます。より謙譲の意を込めたい場合は、「万全を期すため」「慎重を期して」などの表現を選ぶのも一つの手です。
Q. 「大事をとって」と「念のため」の違いは何ですか?
A. 「大事をとって」は、「悪い事態(病状悪化など)を未然に防ぐ」という予防的な意味合いが強いです。一方、「念のため」は「確認や念押し」の意味が強く、既に起きていることに対してミスがないかチェックする際によく使われます。
5. まとめ:プロフェッショナルとしての「大事をとる」勇気
「大事をとって」という言葉は、決して逃げの言葉ではありません。
- 自分の状態を客観的に把握している
- 周囲への影響(感染やミスの波及)を考慮している
- 長期的なパフォーマンスを優先している
これらを示す、非常にプロフェッショナルな判断の言葉です。もしあなたが今、無理をしようとしているのなら、勇気を持って「大事をとる」という選択肢を選んでみてください。その誠実な判断は、巡り巡って周囲からの信頼に繋がるはずです。
[著者プロフィール]
名前: 篠崎 恵美
肩書き: ビジネスマナーコンサルタント / 人材育成アドバイザー
専門領域: 職場コミュニケーション、敬語・接遇マナー、リスクマネジメント
主な実績: 大手企業を中心に年間100回以上のマナー研修に登壇。著書に『角を立てずにNOを伝えるビジネス語彙集』などがある。
[参考文献リスト]


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