「来週月曜日以降にお願いします」
「10日以降なら空いています」
ビジネスメールやスケジュール調整で、こんなフレーズを目にすることはありませんか?
その時、あなたを一瞬の迷いが襲います。
「えっと……月曜日は連絡していいの?」
「10日は含まれるんだっけ? それとも11日から?」
結論から言えば、「以降」は基準となる日時を「含みます」。
つまり、10日以降なら10日もOKです。
しかし、なぜ私たちはこんなにも迷ってしまうのでしょうか?
そして、もし相手が「含まない」つもりで使っていたら……?
この記事では、言葉のプロフェッショナルとして、「以降」の正確な定義を1秒で理解できる図解とともに解説します。さらに、ビジネスの現場で絶対に誤解を生まないための「言い換えテクニック」も伝授。
もう、カレンダーの前でフリーズする必要はありません。
自信を持って「承知いたしました」と返信できるあなたになりましょう。
この記事の著者:
神宮寺 匠(じんぐうじ たくみ)
ビジネス教養コンサルタント / 言葉のソムリエ
「言葉は、思考の画素数である」を信条に、ビジネス現場で誤解を生まないコミュニケーション術を指導。特に、契約書や公式文書における「言葉の定義」の解説に定評がある。
【結論】「以降」は基準日を「含む」! 覚え方は「以=もちて」
まずは結論をはっきりさせましょう。
「〇〇以降」と言った場合、その「〇〇」は範囲に含まれます。
- 10日以降 → 10日、11日、12日……(10日を含む)
- 13時以降 → 13時、14時、15時……(13時を含む)
- 4月以降 → 4月、5月、6月……(4月を含む)
これは、辞書的な定義だけでなく、法律用語としても明確に定められているルールです。
なぜ「含む」のか? 漢字のルーツで納得
「以降」の「以」という漢字。
これは漢文で「以て(もちて)」と読み、「〜を使って」「〜を起点として」という意味を持ちます。
つまり、「10日以降」とは、
「10日を持って(起点として)、それより後ろ」
という意味なのです。
「以」がつく言葉は、基本的にすべて「基準を含みます」。
- 以上(基準を含む)
- 以下(基準を含む)
- 以前(基準を含む)
- 以後(基準を含む)
逆に、「以」がつかない「未満」や「超」は、基準を含みません。
「以=もちて=含む」と覚えておけば、もう迷うことはありません。

なぜ「以後」と迷う? 似ている言葉との決定的な違い
「以降」と似た言葉に「以後」や「以来」があります。
これらはどう使い分ければよいのでしょうか?
1. 以降 vs 以後(いご)
辞書的な意味では、どちらも「基準を含んで、それより後」であり、ほぼ同じです。
しかし、使われるニュアンスに違いがあります。
- 以降:具体的な日時や期間を指す場合によく使われる。ビジネス文書向き。
- 例:「4月1日以降のスケジュール」
- 以後: 「今から後(今後)」という継続的な意味や、やや抽象的な未来を指す場合に使われることが多い。
- 例:「以後、気をつけます」(=今からずっと)
2. 以降 vs 以来(いらい)
この2つは明確に違います。
- 以降: 過去にも未来にも使える。
- 例:「来週以降」(未来)、「明治以降」(過去)
- 以来:過去のある時点から、現在まで続いていることにしか使えない。
- 例:「卒業して以来、会っていない」(過去〜現在)
- NG例:「来週以来にお願いします」(未来には使えない)
似ている言葉の使い分け早見表
| 言葉 | 基準点 | 使える時制 | ニュアンス・特徴 |
|---|---|---|---|
| 以降 | 含む | 過去・未来 | 具体的。ビジネス文書で最も一般的。 |
| 以後 | 含む | 過去・未来 | 「今から後」という意味で使われやすい。 |
| 以来 | 含む | 過去のみ | 「〜から今までずっと」という継続を表す。 |
| より後 | 含まない | 過去・未来 | 基準日の翌日からスタート。 |
トラブル回避! ビジネスで「絶対に誤解させない」3つの言い換えテクニック
「以降」の定義は「含む」です。
しかし、残念ながら相手も同じように正しく理解しているとは限りません。
特に重要な契約や締め切りにおいて、「相手が『含まない』と思っていた」という認識のズレは致命的です。
そこで、ビジネスの現場では、あえて「以降」を使わずに誤解を封じ込めるテクニックを使います。
テクニック1:「〜から」と言い換える
最もシンプルで確実な方法です。
「10日以降」ではなく、「10日から」と言えば、10日が含まれることは誰の目にも明らかです。
- △ 10日以降にお願いします。
- ◎ 10日からお願いします。
テクニック2:「当日を含む」と注釈を入れる
どうしても「以降」という言葉を使いたい(または使う必要がある)場合は、カッコ書きで補足します。
- ◎ 4月1日以降(当日を含む)に適用されます。
逆に、当日を含めたくない場合はこう書きます。
- ◎ 4月1日以降(4月1日は除く)
- ◎ 4月1日より後にお願いします。
テクニック3:英語なら “on or after”
グローバルなビジネスメールでは、さらに注意が必要です。
単に after April 1st と書くと、「4月1日の後(=4月2日から)」と解釈されるリスクがあります。
明確に「4月1日を含む」と伝えたい場合は、以下の表現を使います。
- on or after April 1st
(4月1日、またはそれより後 = 4月1日以降)
これなら、ネイティブスピーカー相手でも絶対に誤解されません。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 重要な締め切りやアポイントでは、「以降」という言葉に頼らないでください。
なぜなら、言葉の定義論争で勝っても、ビジネスの信頼関係は守れないからです。「10日以降」と書くよりも、「10日(月)から受け付けます」と書く。この「相手に考えさせない親切心」こそが、デキるビジネスパーソンの証です。
よくあるQ&A:こんな時はどうなる?
最後に、迷いやすい具体的なケースをQ&A形式でまとめました。
Q1. 「18歳以降」は18歳を含みますか?
A. はい、含みます。
18歳の誕生日を迎えた時点から対象となります。ちなみに「18歳未満」は18歳を含みません(17歳まで)。
Q2. 「13時以降」は13時ジャストを含みますか?
A. はい、含みます。
「13時以降にご連絡します」と言われたら、13時00分に電話がかかってくる可能性があります。お昼休みを確保したい場合は「13時半以降」などと指定するのが無難です。
Q3. 法律の条文にある「以前」「以降」は?
A. 厳密に「含む」と解釈されます。
法律の世界では定義が厳格です。「施行日以降」とあれば、施行日当日も適用範囲に入ります。
まとめ:言葉の定義を知り、相手への配慮に変える
「以降」は、基準となる日時を「含む」言葉です。
「以=もちて」という語源さえ覚えておけば、もう迷うことはありません。
しかし、本当に大切なのは「自分が正しい意味を知っていること」ではなく、「相手に誤解させないこと」です。
- 自分は「含む」と知っているから自信を持って行動する。
- 相手には「含む」ことが伝わるように、「〜から」と言い換えて伝える。
この2つのスタンスを使い分けることで、あなたのビジネスコミュニケーションはより円滑で、ストレスのないものになるはずです。
参考文献リスト
- 『広辞苑 第七版』岩波書店
- 『法律用語辞典 第5版』有斐閣
- 文化庁「公用文作成の要領」


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